扇状地~段丘堆積物

扇状地

 山から平野あるいは盆地に移り変わる地域には、しばしば扇状地ができます。栃木県に見られる代表的な扇状地は、那須野原扇状地と今市扇状地です。扇状地には厚い礫層が堆積し、河川は伏流することもあります。一方、扇端部では湧水が見られることもあります。

 火山性の扇状地については、「第四紀の火山岩類」で紹介します。

段丘とは

 段丘とは平坦面とその末端にある急崖がセットになった地形のことで、全国の河川や海岸沿いに見られます。

鹿沼市付近の立体地形図 (黒川上空の南方から鹿沼市街方面を望んだところ)。中央に流れる黒川の右 (東側) に段丘崖があり、そこから東に鹿沼段丘が広がっています。山地や丘陵と比べると、段丘の地形面がきわめて平坦であるのがわかります。
出典:国土地理院 地理院地図 Globe 外部リンク にて作成。

 栃木県の平地には、段丘が広く分布しています。段丘が今そこにあるのは、数10万年前から現在までの海水順変動や浸食量の変化、河川の流路変遷などの結果です。

段丘堆積物

 段丘の地質は、大きく分けて下部の「段丘礫層」と上部の「ローム層」からなります。これらを一括して「段丘堆積物」と呼びます。

段丘礫層

 段丘礫層は、下の写真のように大小さまざまな礫が、砂の基質で支えられています。

段丘礫層の例。宇都宮市下金井町の宝木段丘。
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク絵で見る地球科学「段丘礫層」 外部リンク

 礫とは本来2 mm以上の粒子を指しますが、栃木県内の段丘礫層では、数10 cm大の礫が普通に見られるなど、礫のサイズが大きいという特徴があります。大きな礫を運ぶには、それだけ大きなエネルギーが必要です。栃木県の河川は、大きな礫を運ぶのにも十分なだけの流れの速さ、水の量を持っているということになります。

 礫のサイズや量は、場所や層準でやや異なり、相対的に礫が多いところ少ないところが見られます。一方で、新しい段丘、古い段丘を比べてみても、あまり極端な違いはありません。

ローム層

 ローム層は、下の写真のように赤茶けた色の土で、火山灰や風成塵 (風で飛ばされた微細な粒子) からなります。大陸由来の黄砂や、火山の噴煙に含まれる火山ガラスはロームの主要な材料です。

ローム層の例。那須烏山市曲畑の露頭。
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク絵で見る地球科学「ローム」 外部リンク

 栃木県の段丘は、ローム層がとても厚いという特徴があります。その厚さは、古い段丘ほど厚く、喜連川付近では最大40 mにも達します。

 ローム層の中には、ときに遠方の火山噴火で飛来した火山灰層・軽石層が挟まっていることがあります。このような火山灰層を広域テフラと呼びます。火山噴火でできた地層なので、はなれた場所の異なる地層でも、同じ広域テフラが挟まっていれば、同じ時期に堆積していたことを示します。

広域テフラの例 (赤城鹿沼テフラ:Ag-KP)。栃木県内では「鹿沼土」としてよく採掘されています。
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク絵で見る地球科学「降下軽石堆積物」 外部リンク

 上の写真は真岡市に見られる赤城鹿沼テフラ (Ag-KP) です。その名の通り、赤城山の噴火で飛ばされてきた軽石が降り積もったものです。写真でわかるように、軽石には極端に大きなものも、逆に微細なものもなく、ある程度サイズのそろった粒子ばかりからできています。これは、噴火で飛ばされた粒子が地上に落ちてくるときに、大きく重いものは火山の近くに降り積もる一方、小さくて軽いものはより遠くへ運ばれるためで、降り積もってできる地層 (降下堆積物) の特徴です。

厚い段丘堆積物

 栃木県内の場合、段丘堆積物はとても厚いという特徴があります。

 通常、段丘礫層は河川に削られた後、低いところを埋めるだけに留まるのが普通です。しかし、栃木県内の段丘礫層は、ひとたび削られても、次の堆積時期に再びその谷を埋め尽くすほど礫が堆積します。時には以前の水準よりも礫が堆積することもあります。これは、それだけ礫の供給量が多いことを表しています。

宇都宮付近の段丘堆積物の東西断面図。浸食の時期に一度削られた凹地を、より厚い礫層が埋めているのが分かります。
出典:産総研地質調査総合センター1/5万地質図幅「宇都宮」(吉川ほか, 2010) を利用し、本ページ用に説明を加筆。

 また、上に述べたように栃木県内では、ローム層がとても厚いという特徴があります。ローム層は段丘だけでなく比較的傾斜の緩い丘陵も厚く覆っています。ローム層を構成するのは主に風成層と火山灰なので、栃木県の西側に多くの火山があることが一因となっていると考えられます。

地盤としての段丘礫層・ローム層

 段丘堆積物を構成する段丘礫層・ローム層は、いずれも地盤としては比較的安定しているといえます。

 しかし、東日本大震災のときには、栃木県や福島県で、比較的安定していると思われてきたローム層が大規模に崩れる斜面災害が発生しました。通常とは違う強い揺れ、あるいは長時間の揺れには、必ずしも強靱ではないことが示唆されます。

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