栃木県の地震と活断層

最終更新 2023.04.20

栃木県の地震

 日本で大きな被害をもたらす地震には、大きく分けて「プレート境界型地震」と「活断層型地震」の二通りの発生メカニズムがあります。詳しくは別ページ「地震のメカニズム」をご覧下さい。

 プレート境界型地震は、その名の通りプレート同士が接する場所で発生する地震で、ときに大規模な地震を発生させます。また、震央が海域であるときには、津波を発生させることもあります。栃木県は海岸からは距離がありますが、巨大地震のときには強い揺れに襲われることもあり、2011年の東日本大震災のときには最大で震度6強の揺れが観測されました。東日本大震災の地震動については、「栃木県の地下地質」のページの図をご覧ください。

 東日本大震災の揺れの強さや主な被害については、栃木県のウェブサイトにある「危機管理・防災ポータルサイト」 外部リンク にまとめられています。

 活断層型地震は、地殻の断裂である断層のうち、地表まで到達する大規模な断層が動いて発生する地震です。従来、知られていた栃木県内の地震被害は、多くがこちらのタイプによるものです。栃木県の主な被害地震については、宇都宮地方気象台のウェブサイト 外部リンク にまとめられています。

栃木県の活断層

関谷断層

 栃木県の活断層として知られているのは、県北部にある関谷断層です。那須火山から南に30 km以上に渡って延びており、地形の上では東側の平地と西側の山地を明瞭に分けています。


関谷断層 (赤線) とその周辺の地形。東側上空から北西を向いている鳥瞰図。山地と平野の明瞭な境界と、断層に伴うリニアメント (線状の地形) が認められます。[画像クリックで拡大]
出典:地理院地図 陰影起伏図 外部リンク傾斜量図 外部リンク産総研地質調査総合センター 外部リンク「栃木県シームレス地質図」 外部リンク を利用して作成。3D地質図 はこちら 外部リンク

 関谷断層では地表を掘削して地層の断面を観察するトレンチ調査が、那須塩原市百村と関谷で行われています (詳しくは参考文献を参照)。これにより、過去3回の活動履歴が判別され、活断層の活動周期が推定できるようになっています。また、その活動が関谷断層全体に及ぶ規模だったかどうかを推定する根拠ともなっています。


トレンチ調査で観察された関谷断層の変位。これは東西断面を南側から観察している図で、西側が東へのし上がる逆断層が2本 (スケッチの赤線: BF1とBF2) 認められます。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク栃木県関谷断層の活動履歴調査 (宮下ほか, 2001) 外部リンク の第11図

 那須塩原市百村での反射法地震探査の結果では、地下には並行する3列の逆断層が存在すると推定されています (渡子ほか, 1998)。このうち、山地と平地を分ける断層は、推定されている3本の逆断層のうち中央の断層に相当しています。百村のほかでも、関谷断層は地表付近ではしばしば数本の断層列に分かれていると判別されています。詳しくは国土地理院発行の都市圏活断層図をご覧ください (地理院地図でのリンクはこちら 外部リンク)。

 関谷断層の西側の山地に分布する新第三紀の地層は、ほとんど垂直近くまで急傾斜しています。また、急傾斜層の西側には背斜構造が認められます (例えば吉川, 2005の地質図 外部リンク)。これは、より広域的に考えると、現在地表で見られる関谷断層よりも西側の地下に変位の大きな逆断層が伏在していて、その東側の地層が撓曲していることを示唆します。つまり、関谷断層は長期的に変形を受けてきた地域のなかではほぼ東の端に当たるというわけです。


関谷断層付近の広域東西断面イメージ。地下の逆断層の活動が、地層や地表に変形をもたらしていると考えられます。[画像クリックで拡大]

 関谷断層は、1683年の日光地震を引き起こしたと推定されています (寒川・室井, 1989)。この地震はとても規模が大きく、関谷断層の歪みエネルギーはいったん解放されたと考えられています。また、トレンチ調査から推定されている活動周期は3000~4000年です。そのため、次の活動まではまだしばらく猶予があると予測されており、地震本部の活断層評価においても、将来の地震発生確率は今後100年以上0%となっています。ただし、関谷断層の活動に関してはまだよく分かっていないことも残されています。関谷断層は数列の断層が並行している箇所もありますし、上述のように関谷断層から離れた西側の山地が震源の直上となる可能性が大きいことには注意する必要があります。

 関谷断層に関する国の公式見解は、地震本部による関谷断層のページ 外部リンク にまとめられています。

その他の活断層

 栃木県では、関谷断層以外には詳しい調査の行われている活断層はありません。ただし、活断層の疑いのある箇所は何ヶ所かで知られています。地震本部のまとめた栃木県の地震と活断層の概要については、「栃木県の地震活動の特徴」のページ 外部リンク にまとめられています。地震本部のページに掲載されている中で、栃木県内に位置する、または特に影響が大きそうな断層は以下の3地点です。

断層名 位置 地震本部の長期評価
内ノ籠 (うちのこもり) 断層 日光市足尾 ページへのリンク 外部リンク
大久保断層 群馬県前橋市~みどり市~桐生市~栃木県足利市 ページへのリンク 外部リンク
太田断層 群馬県桐生市~太田市~邑楽町~大泉町 ページへのリンク 外部リンク

 内ノ籠断層の地下では微小群発地震が発生していることが知られています。詳しくは「栃木県の活火山と地震」のページにある「日光火山群と地震」の説明をご覧ください。

活断層にならない地震断層

 実は、活断層がなければ地震は起きないかというと、そうではありません。地震を起こす断層が地表に現れないこともあるからです。栃木県では被害地震としてよく知られている今市地震 (1949年12月26日) も、地表に断層は現れませんでした。このような場合、どこに断層があるのか、どのくらいの間隔で地震を起こすのかを知ることは困難です。したがって、油断せずに備えておくことがやはり大切ということになります。


地震断層と活断層。地震断層の中には地表まで達しないものもあります。したがって、活断層が見られない場所には地震は起きないとは断言できません。[画像クリックで拡大]

参考文献