最終更新 2023.04.20
プレ-トテクトニクスとは、地球の表面がプレートと呼ばれるいくつもの部分に分かれており、プレートが独立して運動することでさまざまな地質現象が起こると考える理論です。
アフリカ大陸と南アメリカ大陸の海岸線がよく一致することは、16世紀ごろから認識されていました。しかし、科学的に大陸が移動すると考えられ始めたのは、20世紀になってからでした。アルフレッド・L・ウェゲナーは、海岸線の一致の他に、大陸をまたいで古生物の化石や地質構造が連続して分布すること、南極大陸に熱帯性の植物化石が産出することなどを根拠に、大陸移動説を提唱したのです。
大陸をまたいだ古生物の化石の分布。[画像クリックで拡大]
出典:Osvaldocangaspadilla, Own work, Public Domain, 詳しくはこちらを参照
本ページ用に一部改変 (Antarcticaの綴りを修正)。
オリジナルはUSGSのRejoined continents
ウェゲナーの大陸移動説は、すぐには受け入れられませんでした。大陸を動かすだけの巨大な力を説明することが難しかったためと言われています (現在でも議論のある問題です)。しかし、その後、地球物理学的な観測から大陸が動いていることを示す証拠が見いだされるようになり、現在ではGPSをはじめとする地球観測結果が、大陸の移動を確かな事実と証明しています。
プレートテクトニクスでは、「地球はプレートと呼ばれる固い殻に覆われている」と考えます。地球の断面を見ると、地表の近くはリソスフェアと呼ばれる剛体でできているのに対し、その下にはアセノスフェアと呼ばれる流動性をもった部分があることがわかります。下のアセノスフェアが流動できるため、そこに載っている固いリソスフェアが移動することができるのです。このリソスフェアが「プレート」に相当します。
地球表層の断面。アセノスフェアと呼ばれるマントルの一部にだけ流動性があるため、その上にあるリソスフェアは移動することができます。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、地質を学ぶ、地球を知る「地球の構造」 の図を本ページ用に改変。
プレートには、離れる、ぶつかる、すれ違うの三通りの境界型があります。離れる場合についての詳細は、別ページ「 リフティング」をご覧ください。ぶつかる場合には、一方のプレートが上に乗り上げ、もう一方が下にもぐり込むことになります。
境界型 | 海洋プレートが存在する場合 | 海洋プレートが存在しない場合 |
---|---|---|
離れる | 海嶺 | リフトゾーン |
ぶつかる | 海溝 | 衝突帯 |
すれ違う | トランスフォーム断層 | トランスフォーム断層 |
主なプレート境界のイラスト。[画像クリックで拡大]
出典:Jose F. Vigil. USGS - Illustration of the Main Types of Plate Boundaries , Public Domain
地球には大小様々なプレートがあります。これらには、大陸を伴うプレートと、大陸を伴わないプレートがあります。ただし、プレート境界と言われる場所の中には、一部は不完全な境界もあります。下の図は、現在よく使われる代表的なプレート境界を示したものです。
世界の主なプレートとその境界。[画像クリックで拡大]
出典:USGS - Tectonic plates , Public Domain。本ページ用にテキストを和訳。
現在、日本列島には東から太平洋プレート、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいます。これらはいずれも大陸を伴わないプレートです。したがって、この状態が続く限りは、日本列島は大陸と衝突することはなく、常に海に面した位置にあり続けることになります。また、日本海東縁にあると言われる北アメリカプレートとユーラシアプレートの境界は少なくとも不完全なプレート境界で、地表に明瞭な境界を見いだすことが困難です。
さまざまな証拠から、地球上の大陸の配置は過去にさかのぼって復元されています。およそ2億5000万年前、地球上の大陸はほぼひとつにまとまって存在していたと考えられています。これは超大陸パンゲア (Pangaea) と呼ばれています。パンゲアはやがて北のローラシア (Laurasia) 大陸と南のゴンドワナ (Gondowana) 大陸に分裂し、間にはテチス (Tethys) 海と呼ばれる海が広がりました。そして、現在知られるような7大陸と7つの海に変化してきたのです。
超大陸パンゲアとその分裂。[画像クリックで拡大]
出典:USGS - This Dynamic Earth - Historical perspective , Public Domain。
テキサス大学のクリストファー・R・スコイーズ博士を中心としたPaleomap Projectでは、そのような過去の大陸配置図を動画やデータで公開しています。
復元されたプレートの運動をたどることで、未来の予測もつけられます。そして、およそ2億5000万年後には大陸は再び集合し、ひとつの超大陸を形成すると考えられています。ただし、その場所と形態には諸説あり、大陸が太平洋に集まるとするアメイジア (Amasia) またはノヴォパンゲア (Novopangaea)、大陸が大西洋に集まるとするパンゲア・ウルティマ (Pangaea Ultima) またはパンゲア・プロクシマ (Pangea Proxima) などの仮説が提唱されています。
プレートをつくるリソスフェアの表面は、地殻からなっています。地殻はマントルよりも軽いので、プレートはアセノスフェアの上にずっと浮いているように思えるかもしれません。しかし、海洋プレートの場合には、リソスフェアの大部分はマントル物質です。このため、大陸プレートと海洋プレートがぶつかり合ったとき、重い物質である海洋プレートの方が大陸プレートの下に沈み込むことになります。
海洋プレートの沈み込みの模式図。上が密度で分けたときの断面で、下の図が流動性で分けたときの断面。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「地球表層の断面」
海洋プレートが沈み込む場所を「沈み込み帯」(subduction zone) といいます。そこでは、地表 (海洋底) にある物質が、地下深くに運ばれてゆくことになります。地表で安定だった物質も、地下の高い温度・圧力では不安定となり、分解したり周りのものと反応したり、さまざまな化学変化・構造変化を起こします。それによって地震や火山、付加体の成長など、沈み込み帯特有の現象が起こるのです。
沈み込み帯。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「沈み込み帯」
一方、大陸プレートどうしがぶつかると、どちらも沈み込めないので「造山運動」と呼ばれる著しい地形変化を引き起こします。その一例であるヒマラヤ山脈の成り立ちを、別ページ「大陸の衝突-ヒマラヤ山脈」でご覧ください。