最終更新 2023.04.20
世界で最も高い山はヒマラヤ山脈のエベレスト山です。この海から最も突き出たはずの場所に、実は海に生息していた生物の化石が見つかるのです。すなわち、エベレストをはじめとするヒマラヤ山脈は、もとは海に沈んでいたはずの土地が、およそ9,000 mも隆起してできたことになります。
標高5,300 m付近から撮影されたエベレスト山。山頂直下に地層の縞模様が確認できます。[画像クリックで拡大]
出典:Digital photograph of Mount Everest taken at an elevation of 5,300 meter from Gokyo Ri, Khumbu, Nepal - Photograph taken by Rdevany, CC BY-SA 3.0 , 詳しくはこちらを参照
ヒマラヤ山脈の大規模な隆起は、大陸同士の衝突に原因があります。現在のインドは、かつては独立した大陸で、インド洋の南半球に位置していました。しかし、プレートの動きとともに北上を続け、約5000万年前頃にユーラシア大陸と衝突し始めます。こうして両大陸の間にあった海は消滅し、海に堆積していた堆積岩は大陸に挟み込まれて陸上へと隆起します。
インド大陸の北上とユーラシア大陸への衝突。7000万年前には南半球にあったインド大陸は、プレートの運動によって北上を続け、ユーラシア大陸に衝突します。[画像クリックで拡大]
出典:The Himalayas: Two continents collide (USGS Public Domain), 詳しくはこちらを参照
インド大陸はユーラシア大陸と衝突してもなお北上を止めず、やがてユーラシア大陸を持ち上げながらその下にもぐり込み、二段重ねの地殻を作り上げます。これがヒマラヤ山脈からチベット高原に至る巨大な高地です。インド大陸とユーラシア大陸の境界は巨大な衝上断層ですが、5000万年に及ぶ衝突の結果、最初の衝突境界は断層としての活動は既に終わっており、新たな衝上断層が衝突したインド大陸の中にできています。現在、インド大陸はかつて存在していた海の堆積物の下にもぐり込み続けているため、化石を含んだ堆積岩が持ち上げられてエベレストの山頂付近にまで隆起してしまったのです。
衝突したインド大陸とユーラシア大陸の断面図。インド大陸はユーラシア大陸の下にもぐり込みますが、海洋プレートと違って大陸プレートは軽いので浮力がはたらきます。こうして大規模な隆起が起こります。[画像クリックで拡大]
出典:Continental-continental convergence: Understanding plate motions (USGS Public Domain), 詳しくはこちらを参照
下の図はインドからヒマラヤ山脈・チベット高原周辺の地形図です。この図を見ると、インド大陸がもぐり込み始める場所であるガンジス平原と、地殻が二段重ねに分厚くなったチベット高原の対照が顕著です。
インド-ヒマラヤの地形図。ガンジス平原とチベット高原の違いが明瞭。[画像クリックで拡大]
出典:地理院地図 標準地図による
下の図は地形図の上に断層を重ねた構造図です。地図上に示された線は、活動時代や規模はさまざまですが、すべて断層です。この図からは、インドの平原・高原には断層は少ないのに対し、チベット高原やヒマラヤ山脈に多数の断層ができているのが分かります。大陸同士の衝突がいかに巨大な力を働かせたかということと、ヒマラヤ山脈がその巨大な力のために変形を受けながら持ち上げられたことをうかがい知ることができます。
インド-ヒマラヤの構造図。インドに比べ、ヒマラヤ山脈やチベット高原に断層が集中していることが分かります。[画像クリックで拡大]
出典:OneGeologyのCGMW Bedrock and Structural geology と地理院地図 標準地図 を利用してQGISで作成。