最終更新 2024.09.22
普段目にする地形、特に山や谷はどのようにしてできるのか、その仕組みを見てみましょう。地球上では、いくつものプレートがゆっくりと動き続けているために、常にその動き方による力を受けています。これを応力といいます。下の図では、強い力で横から押されたり引っ張られたりしたときの地表の変形を模式的に示しています。割れ目やしわができることで、山や谷が形成されることがわかります。
横から押されたり引っ張られたりすることで、地表の変形が起こります。理想的な地層・地盤であれば押されたときも引っ張られたときも2本の断層 (共役断層) ができますが、天然の状況では1本の断層ができるか、しわが寄ったり引き延ばされたりします。[画像クリックで拡大]
力の受け方も場所によって異なり、均一ではありません。強い力を受けた場所ほど、大きく変形することになります。また、場所によって地質も異なりますので、力を受けたときの抵抗力も違います。そうやって多様な地形ができていきます。
力の受け方により、変形が異なる場合のイメージ。力の弱い場所ではしわが寄って盛り上がるだけですが、強い力を受けると割れ目 (断層) ができるようになります。[画像クリックで拡大]
山ができるためには周りの土地よりも高くなるためのエネルギーが必要ですので、何らかの大きな力がはたらくことが必須です。例えば次のような場合があります。
これらは、非常に長い時間をかけて進行する場合も、ごく短い時間に発生する場合もあります。例えば1や3は人の目にはわからないくらいゆっくりと進行しますが、長い年月をかけて高い山や大規模な山脈をつくりだします。一方、2や4はかなり急速に変化が現れ、火山体や流れ山をつくります。
下の写真は、代表的な隆起山脈である北アルプスの例です。
美ヶ原から望む冬の北アルプス。ふもとの盆地との間にある断層の活動でできた隆起山脈で、南北にまっすぐに伸びています。2000年1月撮影。[画像クリックで拡大]
日本各地には大小さまざまな火山があります。火山の姿形はマグマの性質や噴火の際の環境によって変わります。
独立した火山である岩手山。地下では今もマグマが活動を続けている活火山です。1990年4月撮影。[画像クリックで拡大]
山がちな日本の場合、ときに大規模な山体崩壊も発生します。山体崩壊とともに、山体の一部がふもとに運ばれてきて小高い山として残ることがあります。このような小山を流れ山と呼びます。ちょうど古墳と同じようなサイズで、土や木に覆われるとよく似ているため、発掘調査されるまでわからなかった例もあるそうです。
島原市の九十九島の空中写真。海に浮かぶ小島や陸上の小高い丘は、すべて1792年の眉山の山体崩壊で生じた流れ山です。地理院地図 年度別写真 (2015年度)。[画像クリックで拡大]
山と谷は地形としては正反対ですが、でき方は似ているところもあります。すなわち、何らかの大きな力を受けるときに、谷地形もつくられます。例えば、横から押されていくつもの山脈ができると、その間で周りよりも低くなった場所は谷になります。逆に横に引っ張られる力が働くと、断層で落ち込んだりして谷地形ができます。
能登半島の付け根を北東-南西方向に伸びる邑知潟平野の地形。北側を眉丈山 (びじょうさん) 断層、南側を石動山 (せきどうさん) 断層という2つの逆断層に挟まれており、両側が盛り上がったためにできた広い谷地形です。地理院地図 色別標高図 および地理院地図 陰影起伏図 を利用して地理院地図3Dで作成。[画像クリックで拡大]
一方で、谷を作る独自の力もあります。地表を削る力です。地表を削る主なものには風や水または氷とそこに含まれて一緒に転がる砂粒・礫などの粒子があります。地表は削られると低くなり、谷ができます。水や砂粒・礫は谷に集まり、そこを流れたり転がったりしますので、谷はますます深く削られてゆくことになります。このように川が川底を削ることを下刻といいます。山地では川の流れが急で、下刻が長い間続くため、V字谷と呼ばれる深い谷がつくられます。
V字谷のでき方。同じ場所で下刻が続くために、谷が深く大きく成長していきます。[画像クリックで拡大]
流れの急な河川では、土砂は長いこと留まることもなく流されてしまうため、川底に現れた岩盤がどんどん削られていきます。また、川の流路が固定されていると同じ場所で下刻が続きます。こうしてできた峡谷は日本各地に見られます。あまりに大きく急な崖は不安定ですのでふつうは崩れてしまいますが、硬く丈夫な岩盤や地層の傾きなどの条件がそろうと、米国グランド・キャニオンのように大規模な峡谷が形成されることがあります。
栃木県日光市鬼怒川温泉の竜王峡。鬼怒川の急な流れが硬い岩を深く削り込んで険しい峡谷を作っています。1990年11月撮影。[画像クリックで拡大]
断層は岩盤の割れ目ですが、繰り返し活動することによって岩盤をもろくします。大きな断層沿いでは、岩石が細かく砕けたりすりつぶされたりして、断層破砕帯や断層粘土ができることがあります。これらはふつうの岩石よりも強度が弱くなるので侵食されやすく、長い時間とともに谷になります。
京都盆地の東縁から琵琶湖の西側を南北方向に花折断層という活断層が伸びています。空中写真を見ると、その断層の位置に直線的な谷ができているのがわかります。地理院地図 全国最新写真 (シームレス) および地理院地図 陰影起伏図 を利用。[画像クリックで拡大]
上の写真で、京都盆地と亀岡盆地の間は山地になっているのが見て取れます。実はこの山地は盆地との境界にある「京都西山断層帯」と呼ばれる複数の断層の活動でできた隆起山地です。亀岡盆地と京都盆地の間は保津峡と呼ばれる峡谷になっていますが、その流路はまっすぐではなく、大きく蛇行した河川の形態を示しています。これは、山地が隆起する以前からこの場を蛇行しながら流れていた桂川が、隆起とともに河道の位置が固定されて、そのまま蛇行の様子が残っていると考えられています。このような峡谷をなす蛇行の形態を、穿入蛇行といいます。
亀岡盆地から京都盆地に流れる桂川の穿入蛇行の様子。桂川は蛇行しながら流れていたところに、あとから山地が隆起したためにできた地形と考えられています。地理院地図 自分でつく色別標高図 および地理院地図 陰影起伏図 を利用。[画像クリックで拡大]
これまで見てきた谷地形は、時間をかけてゆっくりと進行する凹地のでき方ですが、山のでき方と同様に、突発的に形成される凹地もあります。まず、火山活動による凹地として、巨大噴火でできる火山性カルデラがあります。日本では北海道、東北地方と九州に多くのカルデラが存在しています。火山性カルデラについては、別ページ「カルデラ噴火」をご覧ください。
東西約18km、南北約25kmの規模をもつ阿蘇カルデラ。4回の巨大噴火によって、約9万年前までにできたと考えられています。[画像クリックで拡大]
出典:地理院地図 陰影起伏図 、色別標高図 を利用して作成。3D地形図はこちら 。
また、少し特殊な凹地のでき方として、大型の隕石の衝突があった場合にも、地表に円形に近い凹地ができることがあります。
米国アリゾナ州にある直径約1.2 km、深さ約200 mの隕石クレーター (バリンジャー・クレーター)。直径約30 mの隕石の衝突によりできたと言われています。USGSのウェブページ「Aerial view of Meteor Crater, color, Coconino County, Arizona」 より。[画像クリックで拡大]