最終更新 2017.11.24
地球の内部には人類の到達したことのない、未知の領域が広がっています。
地球の内部は、地表に比べてたいへん高温・高圧の環境にあります。地球の内部構造は地震波の観測や、高温・高圧実験により、次のような成層構造を成していると考えられています。
地球の構成のイメージ図。[画像クリックで拡大]
出典:地球の衛星画像は、NASA VISIBLE EARTHのページにある「Earth - The Blue Marble」( Image created by Reto Stockli with the help of Alan Nelson, under the leadership of Fritz Hasler) を使用。Public Domain, 詳しくはこちらを参照
地球の内部構造を区分する方法は、何通りかあります。以下にはよく使われる2種類の区分方法、すなわち岩質 (組成) による区分と、流動性 (力学的性質) による区分の例を示します。
地球の内部構造の区分図。いわゆる「プレート」はリソスフェアを指します。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、地質を学ぶ、地球を知る「地球の構造」 の図を本ページ用に改変。
上の図に示された境界のうち、マントルと地殻の境界は「モホロビチッチ不連続面 (モホ面) と、マントルと核の境界は「グーテンベルク不連続面」と呼ばれています。何が不連続かというと、地震波の速度です。地震波速度は密度が高いほど速く、密度が低いと遅くなるので、これら不連続面を境に物質の密度が変わっていることが分かります。また、リソスフェアは「プレートテクトニクス」理論で「プレート」と呼ばれる部分です。その下のアセノスフェアは「流動性がある」と表現されていますが、液体ではありません。力を受け続けていると、長い時間のうちには流動する程度の軟弱な状態と見なされています。
マグマは上部マントルで発生します。マグマが上昇してくるときに、マントルの岩石を取り込んでくることがあります (捕獲岩)。また、プレート同士の衝突によって、マントルの一部が地表に現れることもあります。これらの岩石や、地震波速度から推定される密度に基づくと、上部マントルは「かんらん岩」と呼ばれる岩石からできていると考えられています。かんらん岩の主要な構成鉱物は、かんらん石、輝石、ざくろ石です。
マントルの中にも地震波速度の変わるところがあり、何らかの原因で密度が変化していることが分かります。その原因には、地下深くなるほど圧力が増大することが関係しています。すなわち、上部マントルの主な構成鉱物である「かんらん石」が、より地下深くで圧力が増加すると共に異なる結晶構造の鉱物に変化することが高圧実験から解明されてきました。上部マントルではかんらん石が安定ですが、圧力が高くなると「スピネル」という鉱物と同じ緻密な構造に変化し、下部マントルではペロブスカイトというより緻密な結晶構造をもつ鉱物と同じ構造へと変化していきます (相転移といいます)。更に、D"層になるとポストペロブスカイトという鉱物に変化することも判明しました。
地球の内部構造の区分とマントルの成層構造の原因となる鉱物相。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、地質を学ぶ、地球を知る「地球の構造」 の図を本ページ用に改変。
ただし、マントルは完全に同じ物質からできているわけではなく、不均質になっているとみられています。また、D"層のようにたいへんな高圧になると、それを再現する実験も容易ではありません。地球の内部には、まだ未解明なことがいくつも残されています。