最終更新 2016.09.10
付加体は、海洋プレートが沈み込む場所で形成される地質体です。
付加体のできる場所。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「付加体」
海洋プレートは、海嶺で噴出した玄武岩類からできています。また、海洋プレート上には、
などが存在します。一方、海溝では陸からもたらされる砂や泥がたまり続けます (タービダイトなど)。
海洋プレートが大陸プレートに沈み込むとき、これらの石や堆積物も一緒に引きずり込まれていきます。しかし、海洋プレートそのものよりも軽いのと、プレート同士は固く接していること、また海山などは障害物となることなど、なかなか沈み込めない条件がそろっています。すると、それらの石や堆積物はプレートの境界部分で海洋プレートから引きはがされ、大陸プレート側にくっついてしまいます。これが付加体です。
チャートはその成分のほとんどがシリカ (SiO2) からできています。そのもととなったのは、プランクトンの骨格です。海にすむプランクトンにはシリカの殻を作る種類がありますが、その骨格は死んでも溶けにくく、海の底に積もります。プランクトンですので個々にはたいへん小さなサイズ (0.1~0.4 mm程度) ですが、長い年月の間に積もり積もって地層となり、石となるのです。
放散中の走査型電子顕微鏡写真 | 宇都宮大学 名誉教授 相田先生のウェブサイト
石灰岩の主な成分は炭酸カルシウム (CaCO3) です。炭酸マグネシウムの成分も混じっています。酸に溶けて二酸化炭素を発生するので、小学校の理科の実験でよく使われます。
石灰岩のもとになったのは、石灰質の殻や骨格を持つ生物です。代表的なのは珊瑚礁の生物で、生物活動の盛んな熱帯・亜熱帯地方の珊瑚礁に生息していた生物が、長い年月をかけて化石となり、石になったものです。
岩手県に分布する坂本沢層の石灰岩。ちくわの輪切りのような丸い物体はウミユリという生物の化石です。1987年7月採取のサンプル。表面を少し酸で溶かしています。[画像クリックで拡大]
石灰岩は水によって溶かされる性質があり、鍾乳洞を作ることが知られています。一方、風化には強いため、カルスト地形と呼ばれる独特の景観を作ることがあります。例えば山口県の秋吉台、中国の桂林なども石灰岩地形の一種です。
石灰岩の作るカルスト地形の例。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「石灰岩」
タービダイトとは聞き慣れない言葉かも知れませんが、岩石の種類です。海溝には陸側からの河川の洪水や地すべりなどによって、ときに大量の土砂が運び込まれます。このとき、濁った流れ (混濁流) によって運ばれた土砂は、ときには海底の泥なども削り取りながら流れ下り、勢いが衰えたところでまず粒子の大きな砂から堆積し、次第に細粒な泥が堆積します。このような砂岩と泥岩の繰り返しがタービダイトです。
タービダイトの例。砂岩 (白っぽい地層) と泥岩 (黒っぽい地層) が繰り返し重なっています。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「砂岩泥岩互層 (タービダイト)」
これらのチャートや石灰岩、タービダイトなどは、付加体として引きはがされるときに互いに混ざり合うとともに、プレート間の押し合う力により引きちぎられたり変形したりしてしまいます。このような岩石の構造をメランジュといいます。
メランジュの例。砂岩 (白っぽい地層) と泥岩 (黒っぽい地層) が変形して混ざり合っています。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「メランジュ」
メランジュには大小様々な断層ができます。上の写真のように、本来は連続しているはずの地層もレンズ状にちぎれた形になっています。これは地層だけではなく、石灰岩の岩体のように、数 kmもの岩体全体でも、もとの地層や岩盤から離れ、巨大なブロックとして孤立した状態になっていることが分かっています。
ナップ構造とは、「地層は下にあるものほど古い」という常識 (「地層累重の法則」) に反し、上にあるものの方が古い場合に使う用語です。ナップ構造は正常に堆積した地層では起こりえず、古い地層と新しい地層の境界は、必ず断層になっていることになります。ときには水平に近いほど低角度の断層 (衝上断層) であることが多く見られます。
ナップ構造の模式図。本来なら下にあるはずの古い地層や岩体が、新しい地層の上に重なっています。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 、絵で見る地球科学「ナップ」 (本ページ用に吹き出し部分を加筆)。