最終更新 2023.04.20
世界には、「ホットスポット」と呼ばれる火山活動があります。ホットスポットの地下では周りに比べてマントルが高温になっており、定常的にマグマが発生しています。これは、地球の内部からマントルプルームと呼ばれる上昇流が発生しているためと考えられています。
南太平洋に位置する孤島であるイースター島 (ラパ・ヌイ) は、島中に存在する石像「モアイ」で有名で、世界遺産にも指定されています。このように他の陸地のないところに島ができるには、もちろん理由があります。
イースター島の位置。中央の小さな点がイースター島で、周囲にほとんど陸のない、まさに絶海の孤島です。[画像クリックで拡大]
出典:OneGeology Portal による地図。
独特の造形で知られるモアイの石像をよく見てみましょう。意外とゴツゴツ・ざらざらしていることがわかります。モアイはイースター島の中でもラノ・ララクと呼ばれる山でのみ切り出されていることが知られていますが、ここは立派な火口跡のあるかつての火山です。すなわち、モアイの材質は凝灰岩 (火山礫凝灰岩) なのです (Gioncada et al., 2010)。
モアイの肌をよく見ると、意外とゴツゴツ・ざらざらしていることがわかります。これは火砕岩からできていて、サイズの異なる火山礫などが含まれているためです。[画像クリックで拡大]
出典:
Wikimedia「File:Moai Rano raraku.jpg」による (Public Domain)
実は、ラノ・ララクに限らず、イースター島のすべての地質は火山の噴出物からできた岩石や地層からできています。今でこそ島の中に活動中の火山は確認されていませんが、イースター島は火山島として誕生し、成長してきた島だったわけですね。しかし、プレートの沈み込みに起因してマグマが発生している日本などとは異なり、イースター島の周辺にはプレートの沈み込むところはありません。つまり、イースター島のマグマの起源はマントルから直接上昇してくるマグマ、「ホットスポット」というわけです。
ホットスポットの例として、特によく知られているのがハワイです。ハワイもまた太平洋の中に孤立して存在する島々ですが、こちらには活火山があります。その海底からの高さは9000 mにもおよび、世界最大の活火山とも言われています。これだけの量のマグマを生み出すためには、ホットスポットという特別なマグマ発生の仕組みが必要なわけです。
ハワイの火山の特徴はまだあります。ハワイ諸島は海上に現れた火山島ですが、そこから北西方向の海底に、海山が列をなして存在するのです。しかも、それらはみな古い火山体で、ハワイから遠ざかるほど活動年代が古くなるという特徴があります。
ハワイ-天皇海山列。ハワイ島から北西に火山列が形成されており、天皇海山列をへて千島海溝まで追跡できます。[画像クリックで拡大]
出典:地理院地図Globe による地図に加筆。
この海山列の成因は、次のように考えられています。ホットスポットはマントルプルームから由来するマグマであるため、ほとんどその位置を変えることがありません。一方、ハワイの載っている太平洋プレートは、常に動き続けています。マグマが間欠的に供給されると、火山活動の盛んな時期と休止する時期を繰り返すことになります。火山活動の盛んな時期には火山島が形成されますが、休止期の間に火山体はプレートともに移動してしまいます。こうして、点々と火山体がつくられることになります。火山体は長い年月の間に浸食をうけるとともに、プレートもホットスポットから離れて冷えるにつれて浮力が弱くなるため、古い火山体は水没して海山となるのです。
ハワイホットスポットにおける海山列形成モデル。決まった位置にあるホットスポットに対し、地表のプレートが動いていくために、火山列が形成されます。[画像クリックで拡大]
出典:By Joel E. Robinson, USGS. (USGS Public Domain), 詳しくはこちらを参照
オリジナルPDFについてはこちらを参照。
ホットスポットは世界中に存在することが知られています。
世界の主要なホットスポットとプレート境界の関係。オレンジの点がホットスポット。[画像クリックで拡大]
出典:"Hotspots": Mantle thermal plumes (USGS Public Domain), 詳しくはこちらを参照
ホットスポットは陸上にもあります。アメリカのイエローストーンは巨大な火山噴火や地熱地帯として有名ですが、このマグマもホットスポット起源と考えられています。
イエローストーンホットスポットの位置の変遷。数字は100万年前を表しており、数字が大きいほど古くなります。ホットスポットの位置の変遷は、西南西に移動する北米プレートの動きと調和しています。[画像クリックで拡大]
出典:By Kelvin Case at English Wikipedia, CC BY 3.0 , 詳しくはこちらを参照