日本沈没時代

多島海だった東日本

 日本海ができたての頃、関東から東北地方の広い範囲は大部分が海に沈んでいました。火山活動も引き続き活発で、多くの海底火山が活動していたと考えられています。

 東北日本弧の広い範囲で水没していた証拠は、各地の海成層として残されています。奥羽山地の中軸部にもこの時代の海成層が分布しており、岩手県一戸では多数の貝化石が産出することで知られています。

 特に大きく沈んだのが現在の長野県から山梨県、新潟県にまたがる地域で、フォッサマグナ (大きな溝という意味) と呼ばれています。この地域を埋める堆積物の厚さは、実に6000 mを超えるといわれています。

珪藻土とチャート

 この時期の地層には、深海堆積物が多く見られます。代表的なのが珪藻質泥岩です。多島海であまり大きな陸地がない環境では、遠くまで土砂を運ぶ巨大河川も発達しません。こんなときに海に堆積するのは、主にプランクトンの死骸です。およそ1600万年以降、日本各地に珪藻質泥岩が形成されています。不純物が少なく、ほどよい固さのものは、「珪藻土」と呼ばれて採掘されることもあります。一方、熱や圧密を受けると、チャートと呼ばれる緻密で固い岩石になります。

珪藻質泥岩の産状の例。深海で珪藻が静かにたまってできる経緯から、均質で粒度のそろった石になります。しかし、風化にはあまり強くなく、写真のように細かく砕ける性質があります (スレーキング)。
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク絵で見る地球科学「珪質シルト岩」 外部リンク

 でも、プランクトンは何も珪藻だけではないはずです。実際、珪藻質泥岩や珪藻土には放散虫の化石も産出します。しかし、一緒に生息していたはずの有孔虫の化石は含まれません。その理由は、海の深さにあります。浅い海では海水は炭酸塩 (一般には炭酸カルシウム) に飽和していますが、深くなると飽和しておらず、有孔虫の殻のような炭酸カルシウムは深い海では時間とともに溶けてしまうのです。つまり、この時代の海はとても深かった (深さ数1000 m) ことが分かります。

石油資源

 珪藻質泥岩のもうひとつ重要な役割は、石油です。珪藻は生物ですので、溶けずに残る殻のほかに、有機物も大量に積もることになります。これらは長い年月の間に濃集・熟成し、やがて原油となるのです。珪藻質泥岩の多い秋田・山形・新潟県には、かつて多数の油田が開発されました。現在でもまだ未発見の埋蔵油田があると考えられており、調査が続けられいます。

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