沖積層

最終更新 2023.04.20

沖積層とは

 沖積層は最終氷期以降に主に平野に堆積した地層の総称で、川沿い、海沿いに分布しています。日本の平野の多くは沖積層が堆積してできた土地です。


関東平野南部の沖積層の分布。白く塗りつぶされた地域が沖積層の分布域です。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク1/20万日本シームレス地質図データベース 外部リンク

 特に海に面した海岸平野は、今よりも海水準が高かった約6000年前の縄文時代に、広い範囲が海に覆われていました。その後海水準は低下しますが、例えば日本最大の平野である関東平野ではなかなか海が引かず、近世まで内湾状に海が入り込んでいました。内海には平野周辺の産地から運ばれてきた砂泥が堆積し続けていたために土地が平坦である一方、その地層は水分を多く含んで軟弱な場合が多くあります。このため、人の暮らしの場としての環境を改善すべく、沖積層の分布地域はさまざまな耕作の試みや土木工事など、多くの人の手が加えられてきた土地でもあります。


茨城県霞ケ浦環境科学センターから臨む霞ヶ浦。湖畔に広がるれんこん田も沖積層の分布地域です。この地域のれんこん栽培は、水が多いことを生かして1970年代頃から広がったと言われ、今では特産品となりました。2015年2月撮影。[画像クリックで拡大]

沖積層のつくり

 縄文時代よりも前、約2万年前の最終氷期まで遡ると、更に状況は異なります。最終氷期、海水準は現在よりも100 mも低かったと言われています。このため、現在の海岸の多くは干上がり、そこを川が刻んでいました。氷河期が終わるともに海水準も上昇し、谷を埋めて砂がたまり始めます。縄文時代頃には海水準は今よりも2 mほども高く、海は内陸まで入り込んで行きました。このため、現在砂浜が見られるような海岸地域も今よりも深い海となり、砂よりも細かい泥がたまるようになります。約6000年前を過ぎると再び海水準は下がりはじめ、泥の堆積する地域は沖合に移り、海岸付近は再び砂がたまるようになります。


沖積層のつくり。地表は平らな土地ですが、地下には古い時代の谷や、海の地層が埋まっていることがあります。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク絵で見る地球科学「沖積層」 外部リンク

 こうしてできた海岸平野には、地表こそ平坦ですが、過去に刻まれた谷地形が埋もれていることがあります。したがって、沖積層の厚さも場所によってかなり異なり、例えば東京湾岸では70 mに達する場合もあります。


東京近郊の平野の地下に隠れている谷地形。等高線の数字は東京湾平均海水面との比較 (単位 m)。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター特殊地質図 外部リンク No.40「 関東平野中央部の地下地質情報とその応用」、荒川低地・中川低地・東京低地北部における沖積層の基盤地形 (小松原純子) から抜粋

 また、縄文時代に内湾になったような場所では、泥の地層が地下に広がっています。例えば、東京にはたくさんの高層建築物がありますが、泥の層は軟らかいので年月を経るうちに建物の自重で沈み込んでしまいます。これを避けるため、固い地盤 (支持層または支持基盤) まで長い杭を打ち込み、それを支えとしています。

N値

 地盤の固さをはかる指標に「N値」という数字があります。「標準貫入試験」という調査方法で調べるもので、決まった方法で鉄のパイプを打ち込むのに必要な打撃回数で表します。したがって、数字が大きいほどしっかりした地盤ということになります。ちなみに50を超えては計らないのが普通です。