日本列島の土台:付加体

最終更新 2016.09.10

地質構造の帯状配列

 日本列島、特に西南日本の太平洋側の地質を見ると、同じ地質が島弧の方向に連続しているのが分かります。地図上ではある程度一定した幅をもつ連続した分布を示すことから、「○○帯 (○○は地名)」と呼ばれます。これらは主に付加体と呼ばれる地質からできており、海溝で海洋プレートが沈み込むときに形成されます。日本の付加体は日本海側ほど年代が古く、太平洋側ほど新しい時代にできたことがわかっています。このことは、地質時代を通じて日本の下には海洋プレートが沈み込み続けており、付加作用が繰り返し起きていたことを意味しています。言い換えると、日本は太平洋側に成長してきた大地であるわけです。


西南日本の地層の分布。東西方向 (島弧の伸びの方向) に地層が連続しているのがわかります。[画像クリックで拡大] 出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク1/20万日本シームレス地質図 (基本版) WMS 外部リンク地理院地図 色別標高図 外部リンク を基にQGISで作成。

 特に、ジュラ紀の付加体は北海道から九州-沖縄に至るまで地表に広く分布しており、日本列島の土台をなしています。三次元的に見ると、その上位にはより古い付加体が、下位にはより新しい付加体が隣接しています。


付加体の成長。原則として新しい付加体が海溝側に形成されていきます。[画像クリックで拡大]
出典:産総研地質調査総合センター 外部リンク 絵で見る地球科学「付加体の成長」 外部リンク

付加体と変成岩

 海洋プレートが沈み込む場所に、必ず付加体が形成されるとは限りません。現に、東北日本の太平洋沖の日本海溝では、現在付加体はほとんど形成されておらず、海洋プレートと堆積物はそのまま地球内部に消えていきます。それどころか、沈み込むときに陸地を削り取っている場合も多いこと (「構造侵食」といいます) もわかってきました。したがって、現在残されている付加体の地質は、大規模な付加作用が起きた後、海洋プレートによる侵食を免れたものに相当することになります。

 プレートの沈み込みとともに地下深くにもたらされた付加体は、高い温度と圧力のために変成岩になります。このような変成岩は「広域変成岩」と呼ばれます。特に沈み込みによって形成される広域変成岩は、冷たいプレートによって地下深くの高圧領域にもたらされることから「高圧低温型」の変成岩です。日本では、西南日本の「三波川帯」と呼ばれる地質が代表的です。


三波川変成岩の例。埼玉県長瀞町には荒川の河岸に露岩が続いており、「岩畳」として古くから有名です。2016年7月撮影。[画像クリックで拡大]

 プレートの沈み込む場所では、普遍的に高圧変成岩が形成されているはずです。それが地表まで上昇するプロセスは議論がありましたが、海嶺が沈み込むときなどにプレートの沈み込む角度が浅くなり、地下にあった変成岩が絞り出された、と考える研究者が多くなっています。